小児においてカフつき挿管チューブを使用するデメリットはないのか?
本日で今年度の小児科医局、呼吸療法勉強会が終了しました。今回は実際作ったスライドをそのまま使っておりますが…小児における挿管人工呼吸管理についてのお話です。
小児の特徴といえば成人に比べ気管も未成熟で声門から気管分岐部までの距離が短いと言われています。そのため気道粘膜組織の損傷などを懸念し古くからカフ無しチューブが使用されていたわけですが…カフ無しチューブはとにかく管理がしにくい!というか、状態観察が分かりにくいしトラブルが多い!
てなわけで、できるだけカフ付き挿管チューブを使ってほしいのが人工呼吸管理をする者の言い分であります。
「だったらデメリットがないのか説明しろよ!」という話になるので今回は…海外論文等を交えてご紹介します。
まず、日本国内で販売されている小児用挿管チューブをざっと調べてまとめてみました。各社様々なサイズやカフ特徴などがあるのが分かります。
そのなかで挿管チューブのサイズ選択はどのようにするかというと下記に示す「式」というものがありそれらを用いて計算する方法や患児の小指の太さで決定する・・・など色々と方法があります。有名なのはColeの式やMotoyamaの式ですね。
ちなみにACLS(二次救命処置)の小児版であるPALS(Pediatric Advanced Life Support)では下のようにサイズ選択の推奨があったり患児の身長に合わせてテープ( Broselow-Tape)を合わせてその結果で挿管チューブや薬剤量を決めたりしています。ちなみにこのテープは入手しようとしらべてみたところ楽天にはなくAmazonで販売しているのを発見しました。
前フリのチューブサイズについてはこんなかんじで決定するわけですが・・・
本題のカフ有りとカフ無しで比較したらカフ有りのほうが換気がうまくできるしオートトリガーの心配も減る。おまけにカフ無しチューブだと自己抜管の危険性もあがるからカフ有りがいいのですが、デメリットとしての気道損傷などはどうなのか?今回参照する論文は・・・
「Prospective randomized controlled multi-center trial of cuffed or uncuffed endotracheal tubes in small children.」という2009年のBritish Journal of Anaesthesiaに載った文献です。
どんな内容かというと、カフ有りチューブとカフ無しチューブを使用した患児でカフによる副作用や再挿管の有無などを調査した論文となります。
今回、論文の引用を載せていますが、英論文を見ていく中で「ポイント」を見ればある程度の事が分かります。てなわけでせっかくなので少し紹介します。
・Methods・・・方法
・Result・・・結果
・Conclusion・・・結語
この四つが論文の大きな枠組みです。今回の論文で言うとこちらのような感じで書かれています。
細かな内容はネットで検索してもらえればいいかと思いますが、ざっくり内容を翻訳しますと・・・
24施設が合同で5歳までの患児におけるカフ有りの1119症例とカフ無しの1127症例で調査したところチューブの再挿管を行った症例はカフ有りで2.1%、カフ無しで30.8%だった。また、抜管後のstrider(中枢気道の狭窄音)の発生はカフ有り群で4.4%、カフ無し群で4.7%。必要最小カフ圧は10.6cmH2Oであった。
と・・・いうことでカフ有り群のほうが再挿管率は低く、striderについても差はない。それにカフ圧過剰による粘膜損傷も20cmH2O以下なので心配ないという結果が出ています。
このことから基本的にカフ有り挿管チューブのほうがデメリットなく、というかメリットがあるのではないかと思います。
今回は少しマニアックな内容に入っていきました。小児における呼吸管理はなかなかとっつきにくいところもあるかもしれませんが、私も勉強しようと思います!
匿名でのコメントで失礼いたします。
返信削除小児科医への勉強会お疲れ様です。ここまで任せられているとは大変素晴らしいですね。
他施設の新生児から小児領域で気になる所があり質問させていただきます。
人工呼吸管理下でのネブライザーに関してどのように説明していますでしょうか?
(自分個人的意見は基本的にはすべきではないと考えています。ただ気管支喘息の重責発作に対するMDIは効くと思います。CLD予防のステロイドは...微妙なところです)
匿名さん
削除質問ありがとうございます。するどい質問でびっくりしました。ネブライザーについては小児・成人問わず感染励起などの懸念も含め基本的に反対派です。小児においてはエアロゾルのたれこみなどは成人と比べて絶対量的に危険ですし。
しかし、気管支喘息の例を挙げられているようにデメリットがメリットを上回る場合はいいのではないかと話しています。
ただ、状態にもよりますがパルミコートなどの吸入ステロイドを使用する場合はアリです。ようは長期の定期的吸入には反対といったところとなります。
CLDの話も挙げられていますが、CLDは出生初期段階で完成されているものなので薬剤でどうこうというのは難しい場合があります。そういった患児は定時での吸入などが施行されている現状が散見されますが、その場合は副作用が上回り「みんなタキッテル」なんてことも多々あります。
ようは、気道過敏性が亢進している患児がほとんどなのでその場合には状態に応じ聴診のもとブロンコダイレーターの使用はアリです。
と、いうところでいうと匿名さんが仰るようなMDIによるスポットの吸入はメリットあるものですので私も賛成します。
まとまりに欠けますが施設や風習などに起因するのが大きいので私は若いDrには伝えていkるという状況です。
返答になってなかったらすみません。
他施設でもやはり大変なんですね。
削除成人はきれいさっぱりなくなりましたが新生児・小児はなんとも...
あとメーカーから伝え聞いたのですが施設によっては新生児で熱線式口元フローセンサをつけたまま加湿器入口側にエアロネブをつけて行うところもあるそうですが(もちろんSPONT-VSなどでモード的にそうせざるを得ないかもしれないですが...)、どうなんでしょうね?
個人的には取説上にかかれているように薬液が付着してセンサをダメにしたり場合によっては燃える危険性もあったり、回路やセンサのメッシュ部に付着によるロスやそもそも吸気呼気全相でいれてますのでほぼ捨てている感じで意味ないと思っています。
あとあくまで想像ですが400℃まで上げているので薬の熱変性や燃焼により害となるものを産生しないの?と思ってしまうのですが...
匿名さん
削除お疲れ様です。コメントありがとうございます。私は2施設目ですが吸入ははびこっていますよ。先にも書きましたがメリットが上回ればいいのですが、ダラダラ感は払拭できません。人工呼吸中の吸入とは別の話ですが、卓上のネブライザーで成人病棟ではまるで「美顔器」のごとくモクモクしてなんかやってます。。。見るたびに恥ずかしくなりますがICTも動かぬまま…何故かME管理になっているためやりきれないです。
話は戻りまして、加湿器入口にエアロネブというのはどういうことでしょうか?加湿器チャンバーに停滞しそうですし…無意味な気が…。VSであろうとPSであろうとA/Cでも不思議です。
薬剤付着に関しては、当院においての話ですが、口元フローセンサーを使うようなNEO仕様呼吸器はNICUのみの使用でNICUでは吸入をしているということはないですね。
同様のフローセンサー絡みの案件でいうとNOとフローセンサーの併用における熱線破損でしょうか…。こちらも併用不可とうたわれているものは併用禁止としていますが、そのせいでHFOができるものの稼働率が悪く購入2年が経っていますが500時間も使用されていません。
その代わりド○○○ルのV5○○はサラブレッド並みの活躍具合です。
管理上もフローセンサーやその他の併用は頭を抱える問題です。
なお、今のところ薬剤等が熱変性などした事例は聞いていませんが、高温による結晶化や熱量変化の妨げにはなりそうですね。
ご返信ありがとうございます。
削除NICUで使っていないというのはとても素晴らしいですね!是非とも本来のタイトルのカフ付共々、他施設へそれを広めていただきたいです。
話は戻りまして加湿器入口から入れるのは、最近どこかの施設がP○9○0で行い始めた方式だそうです。
呼気側フィルター下のウォータートラップに薬液がたまるそうなのですべて停滞はしていないようですが、脱着による圧解放と菌混入リスクは下がるようです。
ただトラップにたまるイコールほぼ捨てている感じはしますが少しでも患者が吸っていれば的な感じなのでしょうね。
S○Eだとリストラクターがあるので意味ないどころか悪さしかしないでしょうね。
いろいろ勉強になりました!
また他に気になることがありましたら質問させていただきます。
メリットがデメリットを上回る場合でしたm(__)m
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