さてさて…先日行った当直中の出来事…とある病室からバイパップビジョンのアラームがずっと鳴ってるので行ってみるとHi Rate(頻呼吸のアラーム)が鳴ってました。



頻呼吸アラーム設定はこちらのように30回。


ナースに聞くと…

「ずっとなりやまないんです…でもSpo2は下がってないです!」と…(笑)

まあ、そうなんだろうけど…とあることをしたら鳴りやみました。ってなことで今回はタイムリーな事例があったのでバイパップの頻呼吸に対するあまり知られていない対処を紹介します!


観察①
「そもそも本当に頻呼吸なのか?」

これが一番大事です!胸郭や筋肉の触診で本当に患者の自発呼吸が早い場合は頻呼吸でも仕方ありません。オススメなのは平手触診。



拘束性肺疾患であれば肺容量低下に伴い頻呼吸になるのは必然なので頻呼吸は許容。そのような状態は呼吸仕事量も増大しているため挿管し鎮静・鎮痛で自発呼吸を無くし人工呼吸による調節換気も手です。

しかし、患者の自発呼吸以上にバイパップがミストリガー(患者自発呼吸の誤認)を起こして送気していたら…

それはバイパップの機械的な故障かマスクフィッティングが原因です。

この観察を行うにあたっては、短時間でいいのでマスクを外し患者さんの自発呼吸を3呼吸以上観察してパターンをバイパップ装着時と比較するのが理想!

重症的な酸素化障害で外す余裕がない場合は、フィジカルを信じるしかありません…。お次は…


観察②
「マスクフィッティングはどうなってる?」

今回のトピックの鍵がコレ!NPPVってマスクを使うので漏れるのは必然!しかしこれが院内専用機であるバイパップビジョンやV60の落とし穴なんです。

院内専用機の特徴はFiO2が100%まで上げれること!すなわち酸素化障害の患者に使うことが多いわけです。

ナースはみんな優しい!

それは分かる!優しいが故に酸素をマスクから漏らさぬよう必死で装着するわけです。


こんなふうに…




完全に自宅スウェットの私ですが…この頬にマスクが食い込んでいる感じ分かります?

これじゃ患者は苦しいです!そしてなんといっても不快…。

さらにこんなに圧迫していると呼吸器からの送気を送った時にマスクの膨らみ分(マスク自体の伸び縮み)でミストリガー(患者は自発呼吸を行っていないのにマスクの膨らみによる気流の変化を自発呼吸と誤認識すること)が起こる事もあります。

ミストリガーによる頻呼吸の大半は実はコレ!そして冒頭のアラームが鳴っていた病室もこの状況でした。

このことから対処としてはマスクを適度に緩めてあえてリークを作る事です!

過度なリークはかえって悪いですが、患者本来の自発呼吸と同期するようベルトを緩めていき安定したところで固定します。

これをやるとあら不思議!アラームがなりやむことが結構あります。アラームの無駄鳴りは本質的アラームを隠してしまうのでこのような対処を行いしっかりと呼吸状態の観察を行いましょう!

また、ライズタイム設定が速い場合はライズタイムをゆっくりすることも効果的です!

そもそもバイパップビジョンやV60は、IPAPの設定値によってリークの許容量が異なります。おおまかですが、下の表のようになるといわれていますので参考にしてください。



ですので通常使い(IPAP8~12)あたりだと70リッターリークがあっても回路外れは出ません。

このことから無理にマスクをきつく締める必要はないということを覚えてほしいと思います。

過度な圧迫は潰瘍形成も助長しますしね!

あとは…マスクが合わない場合はサイズ変更!

ちなみに当院のNPPV貸し出しはこのようなセットです。



マスクはS・M・Lを揃えて1つのセットとしています。メーカーはフィリップスのマスクですが、フィリップスのいいところはマスクの包装袋にサイズ合わせ用の型があること。






このようなものも活用して患者にあったマスクフィッティングを心がけましょう!

長くなったので終わります!