Bennettシリーズに搭載することができるPAV+モード。PAV+の設定内容や設定方法をご紹介します。

PAV+とは?

Proportional Assist Ventilation Plus
(比例補助換気)

一般的にはPAV(パブ)といいます。このパブ…患者の呼吸仕事量を計算し操作者側で患者呼吸仕事量の何%を補助するかを決めるものですが…この呼吸仕事量という言葉について少し触れていきます。

呼吸仕事量(WOB)とは?

Work Of Breathing 略してWOB
(呼吸仕事量)

読んで字のままですが、呼吸をする上で行う仕事の量をさします。人工呼吸器の目的である「呼吸仕事量の軽減」なんかで使う「呼吸仕事量」のことです。

呼吸仕事量は、肺の膨らみやすさ(コンプライアンス)、気道抵抗(レジスタンス)、一回換気量(ボリューム)、流速(フロー)により算出することができます。

呼吸仕事量=V/C+F×R

それぞれの記号と単位はコチラ

V=一回換気量(ml)
C=コンプライアンス(ml/cmH2O)
F=吸気流速(L/min)
R=気道抵抗(cmH2O/L/sec)

これでいうとコンプライアンス(C)が低下する場合や気道抵抗(R)が増大する時に呼吸仕事量も増大しますしその逆では呼吸仕事量は下がります。

しかし、ここで根本的に注意すべきことが…

それは単位です。

高校物理などを履修してきた方はご存じかもしれませんが、仕事量というのは大抵J(ジュール)をさします。このジュールというのは1 ニュートンの力が物体を 1メートル動かしたときのの仕事をさします。

なんのことやらってかんじてすよね…

このときの計算は…

1J(ジュール)=1N(ニュートン)×1m(メートル)
J=N・m

ということになります。

メートルなんて出てきちゃいましたね…これでは呼吸における仕事量単位とは全くの別もの…だからニュートンなんて言葉は忘れちゃっていいです。

このことから呼吸仕事量という単位は違う単位であることが推測出来ます。


本当の呼吸仕事量とは?

ここでやっとこさパブの画面を見ていきます。





ベネットのパブにおける呼吸仕事量の単位はJ/Lとなっています。

実は、呼吸仕事量における「仕事」とは1Lのガスを10cmH2O動かす力のことをいうのです。

詳しい計算式は収集つかなくなるので省きますが、「呼吸仕事量」には特別な単位がつくということを覚えていただけたらと思います。

さてさて、単位の話はおいといてベネットのパブに戻ります。

ベネットのパブモードは先に挙げたようにコンプライアンスとレジスタンスが関係していました。そして、パブモードはコンプライアンス成分の補助としてV(一回換気量)を、レジスタンス成分の補助としてF(吸気流速)をサポートするわけです。


ざっくりいうと…

気道抵抗が高い患者は勢いよく吸わないと吸えないので勢いである吸気流速を主に補ってあげます。対してコンプライアンスの悪い膨らみにくい肺の患者は肺を膨らませるための容量を補ってあげるわけです。そしてその補い方を患者仕事量に対してどのくらい(何%)補助するかという設定を行うことがパブで出来ます。

ベネットパブの設定方法

ベネットのパブは患者呼吸仕事量を計測しなければ補助ができません。このため自発呼吸が存在することが大前提です。設定方法としてはSPONT(自発)モード→PA(PAV)を選択します。





そのあと呼吸仕事量を正確に計算するために気道抵抗となる挿管チューブ(又は気管切開チューブ)のサイズを入力します。





入力すると「スタートアップ」という文字が右上に出て呼吸仕事量の計算を機械側で始めます。





患者の呼吸が不規則であったり自発呼吸が小さかったりするとスタートアップが完了せず(呼吸仕事量計算がうまくできない状態)パブモードが動かない時があります。そのような時は呼吸パターンが落ち着くまでパブは行わず通常の換気モードで換気を行うことがベターです。


スタートアップが終わり呼吸仕事量バーにWOBが下のように表示されたらパブモード換気が正常に行われているということになります。


ベネットPAVモード画面


パブを設定するにあたり患者の呼吸仕事量であるWOB(PT)が緑色のバーラインに入るよう%SUPPを調節することが好ましいといわれています。これは正常のヒトにおける呼吸仕事量が0.4J/Lあたりだと言われているからです。


よって患者に過度な呼吸仕事を押し付けるようなものは下のように総患者仕事量が大きく患者仕事量も大きいような場合です。このような場合は患者が疲れてしまいますのでサポートをあげてあげるべきです。


ベネットPAVモード設定


逆に患者のサポートを大きくしすぎてしまっているものは患者仕事量が0に近付き左寄りなバーレベルになってしまった状態。これは先程とは逆で患者に楽をさせ過ぎているのでいつまでたっても離脱が出来ません。





このようにパブモードではWOBの値がサポート率を調節しどこのラインにあるかを観察して設定を行っていきます。

奥の深いパブですが、患者観察を行うととてもメリットの大きい換気モードだと思います。

やはり患者観察が第一です。みなさん日頃の患者観察もしっかり行いがんばりましょう!