先日お手伝いをしたワークショップ参加ドクターからトリガーウィンドの質問をされたのでちょっとマニアックですが、人工呼吸器のトリガーウィンドについて圧波形(グラフィック波形)などを用いてお話します。


トリガーウィンドは「同期」の仕組み

トリガーといったら人工呼吸管理を行っていく上で必要不可欠なものです。このトリガーの仕組みは「圧トリガーとフロートリガーの違い」でみてもらうとして・・・
人工呼吸器のSIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation,同期式間歇的強制換気 )モードは多くの施設で使われているモードだと思います。SIMVの特徴は強制換気を自発呼吸に同期する「同期式の強制換気」ができPS換気による自発サポートも可能なことです。さらに自発呼吸が無くなった場合にも最低限の呼吸を確保できることで人気のモードとされています。しかし、ここで疑問なのはどうやって強制換気を「同期」させその他はPS換気でサポートができるのか?という仕組み。この仕組みに密接に関係しているのが今回のトピックであるトリガーウィンドとなっています。逆にいえばこのトリガーウィンドがなければSIMVモードにおける「同期」ができないわけです。

トリガー無視のCMVモードとSIMVの違い

CMV(Controlled Mechanical Ventilation,調節換気)は自発呼吸が患者にあってもトリガー機能を有さないためどうやっても設定どうりにしか換気しません。この時の圧波形を示します。圧波形についてはベースラインであるPEEPから吸気時間の間、上に凸の波形が現れます。これを踏まえみていくと・・・

図のようにCMVでは自発呼吸を完全に無視し、設定呼吸回数分換気を行います。これでは患者はいつまでたっても人工呼吸器から離脱できません。では、自発呼吸を生かしてあげればいいということでSIMVモードの登場です。

SIMVモードはCMVモードと比較して自発呼吸に同期した強制換気やPS換気、はたまた自発呼吸が伸びた場合は強制換気を行い換気量を確保するように動いてくれます。では、この同期した強制換気の呼吸相と同期していない呼吸相を拡大してみていきたいと思います。ここではトリガーウィンドウを緑の⇔で示しています。


1発目の強制換気を最初の呼吸相としてそこからトリガーウィンドが設定されます。ここではトリガーウインドの値を4秒としていますが、この図からも分かるようにトリガーウィンドは等間隔で設定されると思ってください。上の図において2発目の呼吸は同期強制ということで自発呼吸に同期した強制換気がなされています。そしてこの時の同期強制が行われた時間は緑の⇔であるトリガーウィンドの中にはいっていることがわかります。次に自発呼吸が2発目にトリガーしなかった場合の図を示します。


上の図のようにトリガーウィンドは等間隔で設定されています。そして2発目の呼吸は強制換気であり緑の⇔であるトリガーウインドの中から外れていることも確認できると思います。ようするにトリガーウィンドとは、そのウィンド内で自発呼吸をトリガーした場合に「同期した強制換気」を行い、トリガーウィンドの時間から外れた(自発呼吸が伸びたor無い)場合は同期を考えず強制的に換気を行うというものになります。

なんだか理解しにくいと思うのでちょっと問題を出してみます。次の図を見て上に凸をなした吸気(換気)は同期強制か強制かを判断してみてください。ヒントはトリガーウィンドである緑の⇔内にあるものは「同期強制」、⇔外にあるものは「強制」です。


それでは答え合わせを行っていきたいと思います。先ほどのヒントで書いたように見ていくと下の図のように整理することができます。



このようにSIMVモードでは強制換気を同期させる仕組みがありますが、実際の臨床上でこのことを考えて設定をすることは少ないように思います。同期を綺麗にしたかったらトリガーウィンドを長くする策を講じればいいと思いますがこのトリガーウィンドの設定は設定項目におけるSIMVの呼吸時間や機種により異なります。ベターの計算式としては「SIMV呼吸時間の何%」といったものがほとんどなのでSIMV呼吸時間を延ばせばいいのですが、その影響として呼吸数は少なくなってしまいます。逆をいうとSIMV呼吸回数を上げれば上げるほどSIMVの呼吸時間も短くなってくるのでここで「同期」という事を考えるぐらいならばSIMVモードなど使わずにPSモードへ変更した方がよほど患者同調性は向上するのではないかと思います。

いつも色々なところで言っていることですが、やはり人工呼吸管理を行う上で1番難しいのはSIMVモードだなと思います。皆様、呼吸管理を難しいですが、患者さんのために頑張りましょう!