今回は人工呼吸器管理においての設定項目…一回換気量設定について考えていきたいと思います。意外とこういうことについて説明を見ないのでいい記事書いてるな~なんて思ってます。

さてさて、自画自讃したところでしたが…色々な人工呼吸器解説サイトやセミナー、書籍などで一回換気量は10ml/kgと書かれていることが多いです。

まあ、体重あたり10mlなので60kgの人に対しては

60kg×10ml/kg=600mlとなります。

では、この体重あたりの式は本当に通用するのか考えていきたいと思います。

Aさんが急性呼吸不全で入院し挿管することになりました。Aさんの体重は60kgで身長は170cmです。さきほどの式でいう10ml/kgに換算すれば60kg×10ml/kg=600mlなのですが・・・Aさんが数年後90kgに太ってしまったとします。そしたら下の図のような状態に・・・




Aさんが太った状態で挿管し呼吸管理を行うとしたら一回換気量設定は90kg×10ml/kg=900mlとなるわけです。しかし、図に載せているようにCTをみたらAさんは太っただけなので体重増加分は脂肪。臓器的容積は変わらないわけです。


そう。体重あたりとしたらAさんにとっては900mlの一回換気量はオーバーボリュームになってしまいます。ようするにただ単に体重で換算してしまったらいけないということになります。この弊害をなくすために一回換気量の算出には下記の理想体重式を用います。





これでAさんの理想体重を計算してみると・・・


50+0.91×(170-152.4)=66.01となるためこれに10ml/kgをかけると


66kg×10ml/kg=660mlとなります。


このように患者体重は身長を考慮した理想体重(IBW)を使わなくてはいけません。呼吸管理において一回換気量を決定する場合は是非意識して考えて頂きたいと思います。


※急性呼吸不全といってもARDSや間質性肺炎などの肺が膨らまない疾患については一回換気量を抑えた呼吸管理が推奨されていますのでそのような患者管理は体重あたり6~8ml/kgで行って下さい。