人工呼吸器の性能面でオープンバルブという機構が存在します。今回はそのオープンバルブについてご紹介します。

人工呼吸器の吸気弁と呼気弁の動き方

オープンバルブの話の前に通常の人工呼吸器が動作している時の吸気弁、呼気弁の動きをおさらいしていきます。



通常の人工呼吸器における基本構成を上に示します。人工呼吸器は配管から酸素と空気を導き入れガスミキサーにより規定した酸素濃度に調整を行います。そのあとセンサーにより流速を測定しながら吸気弁や呼気弁を開閉し患者へガスを送り込みます。吸気時の吸気弁、呼気弁の動きは下の図のように吸気弁が開き呼気弁が閉じた状態となります。





このとき呼気弁が閉じた状態なので患者側にガスが流れ込み「吸気一回換気量」を獲得します。



次に、人工呼吸器のモードにもよりますが、規定した吸気終了のタイミングを迎えたら吸気時とは逆の動きである吸気弁の閉鎖、呼気弁の解放が下のように行われ肺胞内圧が高い状態から呼気弁を開いた状態である大気開放の方向へガスが流れ「呼気一回換気量」を獲得します。





これが通常の人工呼吸器による弁開閉の動きとなります。



ファイティング時の弁動作

人工呼吸器のトラブルシューティングにもある「ファイティング」は、人工呼吸器と患者の不同調により引き起こされます。よく見るケースは「人工呼吸器による吸気が継続しているけれども患者は呼気を吐きたがっているが吐けない」というケース。



人工呼吸器の吸気は強制換気であれば設定吸気時間、自発換気であればフローターミネーションなどで規定されます。これらの規定値に達しない場合は吸気から呼気に移らないわけなので当然呼気弁は下の図のように閉じたままです。





この状態のとき、患者は「吐きたいのに吐けない」という過酷な状況に追いやられますし人工呼吸器の吸気フローと患者呼気フローがファイティングすることにより肺胞内圧上昇をもたらす可能性があります。このような「吐きたくても吐けない」という弊害を無くそうとしたのがオープンバルブです。ようするに吸気相でも呼気認識をしたら呼気弁を開ける機構です。このため図で表すとこのような形になります。





オープンバルブとは

オープンバルブは規定した吸気相においても呼気を吐かせることができる機構をさします。例として通常の強制換気を行った時とAPRVを行った時の圧波形・流量波形・弁動作について示します。




通常の強制換気を行った場合は吸気と呼気が1セットづつになり弁の開閉も一般的な動き方を行っています。





しかし、上に示したようにAPRVの時は自発呼吸が存在する場合、弁の開閉を強制換気のような動かし方に加え吸気に反応した開閉と呼気に反応した開閉を行わなくてはいけません。

というよりも、この高圧相による弁の開閉を吸気と呼気で独立して行わないとAPRVという二相性のCPAPは成立しないのです。ようするにAPRVやバイレベルといった特殊モードにおいては常に弁はアクティブな状態(オープンバルブ)であるというわけです。ただでさえhighPEEPなわけなのでこれで吐きたくても吐けなかったり吸いたくても吸えなかったら拷問ですからね。


こういった機構がオープンバルブではありますが、ドレーゲルの呼吸器では、APRVを別としてその他のモードで設定吸気相中に呼気を認識したらすぐに呼気へ転じるという機能を持っています。


ようするに強制換気を行っていても患者自発呼吸が存在し設定吸気時間より早く吸気を終了したいと患者が呼吸を行えばプレッシャーサポートのような動き方になるというわけです。


ドレーゲルの方曰く「肺に優しい!これが弊社のウリです」 といっていましたが、確かに優しいかもしれないけど…強制換気設定でもプレッシャーサポート的に普通に動いているので慣れないと使いにくいかなと感じたりしています。


このようにオープンバルブは機構を熟知した上で呼吸管理を行う必要があるので日々のアセスメントを怠らずケアを行いましょう。