今回は人工呼吸器装着患者の気管内(気管切開)チューブについてのトピックです。ちょうど今日依頼された病棟勉強会で話そうと思ってた内容を紹介します。


気管内チューブと気管切開チューブ

人工呼吸器による換気を行うためには肺内にガスを送る通り道が必要です。一般的に気管内チューブ(ET tube,Endotracheal tube)と気管切開チューブがあります。





(左:気管内チューブ、右:気管切開チューブ)

これらのチューブには人工呼吸器からのガスが漏れないようにしたり唾液などの分泌物を下気道に流れ込ませないようにする役割の「カフ」という風船がついています。言うなればカフを膨らませて上気道と下気道を分けるということになります。

カフを膨らませた状態のチューブがそれぞれ下の写真のようになります。





カフの管理

前述の内容から分かるようにチューブカフは膨らませた状態をできるだけ維持することが望ましいですが、過度に膨らませると気道に圧力(ストレス)がかかり気道粘膜の損傷をきたす可能性があるとされています。


チューブの圧力は「カフ圧計」という器具を使い管理しますが、私達の「気管」には解剖学的に色々な形が存在します。色々な気管の形があるなか、その気管内にチューブが入りカフを膨らませるとすると下の写真のような図になります。





このように解剖学的にいくらカフを入れてもうまくシール(蓋)をすることが困難な場合もあります。また、一度適切なカフ圧にしたつもりでいても体位を変えたり咳込んだり、首を少し動かしただけでも漏れがでたりする患者は少なからずいるものです。


また、カフ圧というのはカフ表面と気管壁が接触することにより圧力が上がります。


普通は下のように綺麗なシールができます。





しかし、圧力だけで管理をするとなると次のようにある一部分だけの接触でもカフ圧は高くなるのです。





実際、人工呼吸器を使用している患者さんの気管形状が分かるようなスライスでCTを切り抜いてみました。





CT写真の下には気管形状に対してチューブを入れた際のカフの様子を表しています。この写真を見ても気管には色々な形状があるということが分かると思います。このことからチューブカフは患者の気管形状や体位、動作でも変化のある観察項目です。


このことから患者のケアに当たるときはこれらの観察をしっかりと行うことが必要となりただ単にカフ圧計でカフを入れるだけでなく解剖的考察やポジショニングの工夫など一歩進んだ看護を行って頂けたらなと思います。