プレッシャーサポートモードは、学校や参考書などで「吸いたいときに吸って吐きたい時に吐ける患者さんに優しいモード」といわれていますがそれは誤りです。その理由と落し穴について解説。



扱って分かる誤った机上論

私自身、専門学校や多くの参考書でプレッシャーサポートモードは「吸いたいときに吸って吐きたい時に吐ける患者に優しいモード」と学びました。しかし、実際臨床現場で自分の意志を持って人工呼吸器操作を行っているとそれは間違いだと気づいたのです。

「吸いたいときに吸う」ために必要なこと

トリガー
当たり前なんですが、患者自発呼吸に同期して換気サポートをするためには患者自発呼吸を認識する必要があります。この患者自発呼吸認識の仕組みをトリガーといいますが、このトリガーが働かないと患者は吸いたいときに吸えません。

トリガーについてはコチラから

ライズタイム
トリガーが働いて圧力サポートを行っても患者の自発呼吸と同じようなスピードでガスが流れるかどうかは分かりません。このガスがどのくらいのスピードで送るかというのを決めるものがライズタイムと呼ばれるものです。

ライズタイムとは、最高気道内圧(PEEP+PS圧)まで圧力上昇を行うまでにかかる時間のことをさし、呼吸器の機種によっては「立ちあがり時間」と表すこともあります。ライズタイムについて分かりやすく図を示します。




左の図ではライズタイムを早くして勢いよく圧力上昇を行っています。このように早く圧力上昇を行いたい患者の特徴は一回換気量が小さいが吸うスピードが早い…多呼吸の患者さんです。仮に「ハアハア」と1分間に30回程の自発呼吸をしている患者に深呼吸を思わせるような遅いスピードでガスを送ると患者は苦しくなってしまいます。このためライズタイムを早くしてプレッシャーサポート換気を行うことが必要となります。


対して右側ではライズタイムをゆっくりに設定しています。これはゆっくり大きな呼吸をしたい患者に対して行います。このライズタイムの設定に関してはフィジカルをとって患者自発呼吸が早く吸いたいのか遅く吸いたいかを考えましょう。このようにトリガーやライズタイムは患者吸気に影響を及ぼし「患者が吸いたいときに吸う」ためには考えなければいけない項目です。



「吐きたい時に吐く」ために必要なこと

フローターミネーション(呼気トリガー)
吸気のタイミングについては前述した2項目がありましたが、患者の吸気時間の規定に影響する設定項目が存在します。それは「フローターミネーション」や「ターミネーションクライテリア」などと言われ吸気流量をもとに人工呼吸器側で吸気時間を規定しています。このフローターミネーションについての図を提示します。





フローターミネーションは吸気ピークフローを100%とした時にどれくらいフローが減衰したら呼気に転じるかを規定したものです。左側の図ではフローターミネーションの値を50%としているため吸気時間は短くすぐに呼気に転じています。一方、右側の図ではフローターミネーションの値を10%としているためピークフローから10%までフローが減衰するまでの時間がかかり結果的に吸気時間は延長しています。


これらのようにこのフローターミネーションにより患者の吐くタイミングは規定されてしまいます。


よって呼気のタイミングはフローターミネーションに依存するため早く呼気に転じてほしい患者にはフローターミネーションの値を大きく、吸気時間を伸ばして一回換気量を増加したい場合は値を小さくすればいいということになります。


おわりに
プレッシャーサポートは患者が吸いたいときに吸って吐きたい時に吐けるモードではありません。人工呼吸器を使っている以上、私達は患者さんにいかに楽な呼吸をしてもらえるかを考えながらケアに当たらないと行けません。自発呼吸のアセスメントは難しいですが、よりよい呼吸管理ができるよう頑張りましょう!

YouTubeでの解説動画はこちらから
実は難しいPressureSupportモードの解説
人工呼吸器におけるライズタイムの重要性