前回は人工呼吸器の適応についてのお話でしたが、今回はメカニック要素に走ります。人工呼吸器はどのような仕組みで動いているのかについてご紹介。


人工呼吸器の基本構成

下に人工呼吸器の中身をざっくりまとめたものを示します。



人工呼吸器は、壁面のアウトレットに酸素と空気の配管をそれぞれ接続した後にガスミキサーへガスを引き込みます。このガスミキサーで設定した酸素濃度、つまりFiO2を規定してあげます。

酸素濃度を規定したガスはフローセンサーというセンサーで流速を測定して吸気弁が開くのと同時に患者へ送られ患者吸気終了と同時に患者呼気弁が開かれ今度は呼気側のフローセンサーで流速を測定したあと大気へ出されます。

この一連の流れが人工呼吸が行っているものです。

言ってしまえばバッグバルブマスク(アンビュー)で行う換気補助を機械的に行っているようなニュアンスです!

なんちゃない単純な機械なわけです。

ここで皆様に是非とも知っておいてほしい事が…

人工呼吸器の換気量は吸気一回換気量・呼気一回換気量・分時換気量の3つが表示されています。



この換気量を計算しているものは先程出てきた「フローセンサー」です。フローセンサーは流速を測定するセンサーですが、どのくらいの流速でどのくらいの時間吸気を行ったか(又は呼気を行ったか)が分かれば換気量を算出できます。

何故そのようなことが分かるかというと…「速さ・時間・距離」の関係と同じです。

ここで問題です

時速60kmで走る車が1分間に進んだ距離はどのくらいでしょうか?

答えは
60km÷60分=1km(これが1分間で進む距離)
実際走ったのは1分間なので1km×1分間で1km進んだことになります。

では、換気量の場合はどうでしょう。
吸気流速が30L/分の時に0.5秒吸ったときの換気量は…

30L÷60=500ml(これが1秒間で吸える量)実際患者は0.5秒しか吸気を行っていないので500ml×0.5秒で250mlが吸気一回換気量ということになります。

このことから分かるようにフローセンサーは人工呼吸器において非常に重要な役割をしています。人工呼吸器によってはフローセンサーの校正(正しく計測するための補正)をしなくてはいけませんので必ず行うようにしてください!

また、人工呼吸においての原則は基本的に吸気一回換気量と呼気一回換気量はほぼ同じ値になります。



しかし、回路が外れていたりした場合は下のように吸気で送った量に比べて呼気の量が減ってしまうことが…




この場合は分時換気量低下アラームがなり知らせてくれることもありますが、アラーム設定をしっかり行っていないと気づけません。

この分時換気量の値は呼気の一回換気量をもとに算出されているので回路に漏れがある場合などは分時換気量低下アラームが作動するという仕組みとなっています。

このことから人工呼吸器の特徴を踏まえて看護師が観察すべき項目は吸気一回換気量と呼気一回換気量、分時換気量ということになります。

これらの数値に差がある場合などは環境確認や患者さんの状態をアセスメントして異常を解消しましょう!

今回は長くなりましたしここらへんで終わります。