今回は医療従事者なら誰もが一度遭遇するであろう酸素療法についてです。この酸素療法、実は奥が深いので是非ともおさらいしてください！

低流量酸素デバイスと高流量酸素デバイス

酸素療法を行う上で必要な酸素投与デバイスは、大きく２つに大別されます。それが、低流量酸素デバイスと高流量酸素デバイスです。それではこの2つをそれぞれみていきましょう。

低流量酸素デバイス

低流量酸素デバイスはカニューラ、マスクのような日常的に使っている酸素デバイスが該当します。これらの共通点としては、酸素流量計から直接患者へ酸素投与をすることにあります。施設で使用されている酸素流量計の種類でも変わってきますが、最大流量は15リットルあたりかと思います。





ここからが本題です。なぜわざわざ「低」流量と「高」流量に分けているのか。その分けている基準についてお話します。

デバイスの基準は患者吸気流速

一般的な成人における１回換気量は500mlとされています。この500mlを私たちはだいたい1秒間で吸ってしまうのでこの時の吸気流速は１分間あたり


500ml×60秒=30L/分


ということになります。


この吸気流速よりも遅いスピードでガスを送っているもの(酸素1L/分でのカニューラや酸素5L/分での酸素マスク)を低流量酸素
デバイスといいます。


仮に酸素カニューラで3L流していた患者さんが二人いるとします。１分間あたり酸素は3L流れているので1秒間あたりになおすと3000ml÷60秒で50ml/秒となります。


Aさんの場合１回患者量が1秒吸って500mlの換気をするとしたら…


酸素50mlのほかに空気を450ml吸うということになります。


Bさんの場合１回患者量が1秒吸って300mlの換気をするとしたら…


酸素50mlのほかに空気を250ml吸うということになります。


それではAさんとBさんを比べたとき酸素濃度の高いガスを吸っているのはどちらでしょうか？


正解は換気量に対して酸素の割合の高いBさんになります。このように低流量酸素デバイスは患者の換気量によって酸素濃度が変わってしまうということを覚えておいて下さい！


逆に患者吸気流速以上のガス流速をもつものを高流量酸素デバイスといいます。

高流量酸素デバイス

高流量酸素デバイスは前述したように患者吸気流速以上の流速をもったものです。具体的にいうとベンチュリーマスクやネーザルハイフローなどがこれに該当します。


ベンチュリーマスクなどは酸素流量こそ少ないもののトータルガス流量は30L/分以上に設定しているはずです。この高流量酸素デバイスの大きな利点は患者吸気流速以上のガスを流すことにより患者の換気に左右されずに吸入気酸素濃度であるFiO2を一定に保つことが出きることです。




このため、ベンチュリーマスクは高濃度酸素を懸念しある程度の酸素投与を必要とする２型呼吸不全を呈する慢性呼吸器疾患の患者へのCO2ナルコーシス予防に適しています。


下に今回紹介したデバイスの酸素流量に対する推定酸素濃度を表した図を示しますので参考にしてください。




ざっくりですがいかがだったでしょうか？少しは参考になれたら幸いです！