今回はネーザルハイフロー(ハイフローセラピー)をとりあげたいと思います。


そもそもネーザルハイフローとは?


ネーザルカニューラを用いた高流量酸素投与デバイスになります。


→高流量酸素デバイスと低流量デバイスについては「酸素デバイスの正しい使い方」でおさらいしてください。


さてさて、ネーザルハイフローの最大の利点は、高流量酸素デバイスなのでFiO2(酸素濃度)を規定しながら30L/分以上のガス供給ができることです。普通の酸素流量計ではよくて15L/分が限界ですから約2倍の流量を流せるというわけです。


このことを考えると「ネーザルハイフロー」でなく「ハイフローセラピー」が呼び方として正しいのかもしれません。保険的には「ハイフローセラピー」ですしね!


それはさておき…


別記事にもかいているようにネーザルカニューラでの酸素投与は6L/分以上になると鼻粘膜乾燥が懸念されます。概論的に6L/分以上としていますが、実際に私が酸素吸入を行ったときは3L/分あたりから違和感を感じ始めました。


このような背景から考えるとネーザルカニューラで30L/分以上のガスを流すことは鼻血もの。患者さんは苦痛で仕方ないはずです!


そうならないためにネーザルハイフローシステムには人工呼吸器用の加温加湿器を用いてガスを十分に加温加湿して鼻から吸入できるようにしています。


構成としては・・・・


①酸素濃度を規定する酸素ブレンダー

ネーザルハイフロー用ガスミキサー


このブレンダーは下の写真のように黄色と緑の配管が繋がっていてます。




緑は酸素、黄色は空気の壁面アウトレット(医療ガス供給口)に繋げて、この配管からそれぞれのガスを導き指定した酸素濃度に調節をする事ができるのがブレンダーなわけです。簡単にいうと100%の酸素濃度である純酸素と21%の酸素濃度である空気を混ぜて50%の酸素濃度ガスを作れる機械です!


②酸素療法回路(RT-202)




ネーザルハイフロー用CPAP回路 RT-202


回路は人工呼吸器用回路の呼気側が無くなったような回路です。ですので青い吸気側回路のみの仕様。よって・・・人工呼吸器回路が組めたら回路組みも安心して組めます!


③加温加湿器






加温加湿器は人工呼吸器で使用している機種(MR-850)


④カニューラ(商品名 Optiflow,オプティフロー)




ネーザルハイフローカニューラ(オプティフロー)


サイズは成人用(S・M・L)
小児用は機械なども変わりますが4種類





で・・・回路を組んで使用しているのは5年以上前の私です。(この時は酸素と空気をミックスするのではなく酸素配管だけで使用するベンチュリータイプ)


ネーザルハイフロー回路写真


このネーザルハイフロー、装着する前にはNPPV(マスク型人工呼吸器)のように患者説明をしっかりとする必要があります。なぜならば・・・


ネーザルハイフローの適応は、カニューラやマスクなどで酸素化ができない酸素化不良の患者さん。ようするにⅠ型呼吸不全です。このため大部分は酸素マスクからの移行になると思います。酸素マスク装着時は口呼吸で酸素を吸っていることが多いですよね?


酸素化が悪い人は努力呼吸となるので口呼吸になるのは当たり前です。しかし、ネーザルハイフローに移行してしまったら口呼吸での酸素吸入はできないので「鼻から吸って口から吐いてくださ~い」といったように十分な声かけを行って下さい。


また、30L/分以上のガスが鼻腔に流れていることもあり若干のCPAP(圧力かかかっている状態)効果もあります。どのくらいの圧がかかっているかというとこ・・・海外論文によれば30L/minのガスを成人に流した時に口を閉じた状態でだいたい3cmH2O程、口を開いた状態ではほぼ圧効果はなかったという結果でした。


ようするに口を閉めても「若干」のCPAP効果しか期待はできません。無いより「まし」レベルですが、以外にも私が実際に装着したところ喋りにくさなどを感じたので臨床的効果は少なくとも患者さんには「少し喋りにくかったりのどがモコモコするかもしれません」などとアナウンスも必要かもしれません。


アナウンスするタイミングですが、装着前にはある程度ガスを加温する時間が必要なので私は加温加湿器をランニングさせて温度を上げている最中に声かけを行っています。



具体的設定について

加温加湿器の設定は電源投入時の挿管人工呼吸器モード。患者さんの主訴として「熱い」といった訴えがあったらマスクモードへ変更しています。個人的には60歳ぐらいまではわりかし健康で一過性の急性呼吸不全ですのでマスクモードでもいいですが、それ以上のお年をめされた方は栄養状態も悪く感染を契機に呼吸不全となる人が多いような気がします。ですので、ベースとして体内の水分バランス維持ができていないでしょうし鼻粘膜等の粘膜系もカピカピな人もいます。こういう方にはとりあえず挿管モードでやっておきたいなと思っています。


お次は酸素濃度と流量に関してです。装着時はだいたいFiO2は高めで…100%からでもいいですが、実際は60%あたりから始めれる人が多いです。流量はハイフローのお約束である30Lで始めています。その後、5分おきに患者呼吸パターンと一緒にSpO2を見ながら40%あたりまで下げていきます。


私は初回の装着時でも60%あたりの酸素濃度からトライしてますが、このような理由があります。


ほどんどの患者さんに言えることは酸素マスクで効果的な酸素吸入ができていないので(リザーバーの酸素を吸えていない・マスクが密着しないので酸素がうまく吸えていない)そんなに高い酸素濃度が必要ありません。


よって、ベッドサイドに行って患者さんの呼吸パターンを観察し酸素マスクの装着状態と現在のSpO2値、患者呼吸パターンから視診的にどれくらいの換気量をどのくらいの時間で吸っているかで設定を決めています。



ネーザルハイフローの中断基準


ネーザルハイフローは酸素療法デバイスなので換気補助はできません。PCO2が高い患者や高くなってしまった患者にはNPPVや挿管人工呼吸が必要ですし、患者が不穏で協力的でない、口呼吸でネーザル酸素投与がてきない患者、一回換気量が800~1000ml以上の患者も同様に次の方法へ移行しなければいけません。


ここで換気量の大きい患者という表現をしましたが…以前、間質性肺炎でNPPVを使用していた患者にどこでこのネーザルハイフローを知ったのかは不明でしたが、本人と家族の希望でネーザルハイフローを使おうとしたことがありました。


口呼吸でなおかつ換気量が大きかったので難しいだろうと予想はしていたものの装着してすぐにSpO2の低下。バッグバルブマスクで補助換気を行おうとしていたところバッグバルブマスクのバッグ部分(ニギニギ押すところ)が患者の努力性吸気により押さずともへこむというのを経験したことがあります。当然、バッグバルブマスクの酸素リザーバーは膨らみません。


これは一回換気量も大きい、かつ吸気流速も速いことから機械的な補助でしか対応が出来ないと判断しNPPVへすぐさま戻しました。


そりゃそうだろ!と思われる方もいると思いますが…


難しいだろうと思っていても本人の意向や家族の意向がある以上トライしないといけないのは辛かったです。




ネーザルハイフローのデメリット


ネーザルハイフローの一番の欠点は酸素化だけはできるので見かけ上モニター的には経過良好に見えることです。高濃度酸素投与はできるものの100%の酸素投与を長時間行ったり流量が50Lなんて使う場合はネーザルハイフローの限界です。無理に粘るのも次の治療へ移行するタイミングを逃したら患者さんにもデメリットですからね。


ネーザルハイフローは患者選択をしっかり行った上で使うと非常に有用なものだと思います。みなさんも酸素療法についてはしっかりと見極めを行って下さいね!


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