新卒の方や病棟異動で初めて人工呼吸器の患者さんをみることになった看護師さんも多いと思います。


そこで今回は人工呼吸器装着患者さんをどう看護していくべきか観察ポイントなどを…立場は違いますが紹介したいと思います。私が思う人工呼吸器装着患者に対する看護師の役割は、安全で安心な治療環境を整えることと人工呼吸器を装着しておこる合併症予防だと思います。


患者さんの安全で安心な治療環境というのは患者さんの状態に応じたケアを行うことが大前提だと思います。そのためには「気付くこと」が大事だと思います。そのために必要なことをおおまかに各論的に書いていきます。


何故人工呼吸器を装着しているのか

人工呼吸器はあくまで原疾患の改善の間に呼吸を代替えする「対症療法」でしかありません。このため患者さんの基礎疾患や人工呼吸器を装着するに至った経過をしっかりと理解する必要があります。

例でいえば、80代の患者さんが人工呼吸器を装着したとします。

その患者さんが人工呼吸器装着に至った経過は熱があり痰が多く酸素カニューレでもSpo2(サチュレーション)が上がらなくなったので酸素化を効率良く行い気管内の分泌物除去も行えるからだったとします。

ということはこの患者さんは発熱と痰量が増えたことからなんらかの感染が疑われます。感染に対しては抗生剤や抗菌薬投与を行いますので感染が落ち着けば全身状態改善につながり酸素化もよくなるし分泌物も少なくなるはず。こうなればもう人工呼吸器による呼吸補助は必要ないということになります。このように原因を把握することでゴールとなる状態をイメージしやすく状態に合わせたケアを行うことができると思います。


患者さんの現在のバイタルはどうか

患者さんの状態から「気付き」を得るためにはまずバイタル変化の観察です。バイタルサインというと

・心拍数
・血圧
・呼吸数
・体温
・Spo2

これらは数値を経過で見れますし基準値さえ覚えればある程度の「正常か異常か」を見極めることができます。

理学所見(フィジカルアセスメント)をとる

人工呼吸器に限定せず呼吸療法で最も大事なものがフィジカルアセスメントです。フィジカルアセスメントは下のように5つありますが、これは主観的要素が強く経験によりスキルも様々です。

また人工呼吸器装着中の患者では気管内挿管や鎮静により問診ができない状態もあるのでその他のアセスメントに力を入れてください。

フィジカルアセスメントの基本として日頃から視診や触診、聴診を行うよう心懸けて余裕ができたら打診なども勉強するといいです。視診に関しては「きつそうじゃないか?」というところから始めてきつそうならば何故きつそうにしているのかを考えましょう。さらに吸気相と呼気相を区別して呼吸パターンを観察しましょう。聴診に関してはできるだけ重症者を早い段階で経験すると健常者との違いがあからさまなので理解しやすいと思います。私がオススメするのは呼吸器内科や循環器内科などの患者さんでこれらの疾患の方です。

・間質性肺炎
・心不全
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・気管支喘息

フィジカルアセスメントについては別記事に書いていますのでそちらも参考にどうぞ!
フィジカルアセスメントの方法

胸部レントゲン写真の観察

胸部レントゲン写真の読影も難しいイメージがあると思います。正直私も判別が難しいと思うケースもあります。まずは昨日と今日で肺野が白いか黒いかが分かれば大丈夫です!下の図では右と左でどちらが白いでしょう?

左の方が白くなっていますよね?左のレントゲンを撮ったときは左肺に広範な無気肺がありますが右側のレントゲンでは無気肺がなくなっているので白い部分が少なくなっています。このようにまずは白くなってたら…悪くなってるんだ~ぐらいで考えましょう!
ちなみにレントゲンは左右逆なのでレントゲン写真を見て向かって左側が右肺、向かって右側が左肺を表しています。


血液ガスをよみとく

血液ガスとは体内の酸素や二酸化炭素、酸塩基平衡を表したもので酸素化の状態や換気の状態を反映する血液データです。これも別記事にかいていますので参考に。
血液ガスのみかた!


意識レベルや鎮静レベルの評価

人工呼吸器は気管内挿管ありきのものです。口から7mm程の管を突っ込まれたら痛いに決まってます!このため人工呼吸器装着中は鎮静剤や鎮痛剤をほとんどの患者に使用しますので鎮静剤を使っていれば鎮静スケールで患者さんのレベル評価を行わなければいけません。もし患者さんが苦痛を訴えて暴れたりしたら事故抜管にもなりかねないので安全を確保するためにもしっかり評価を行いましょう。所属施設がどのようなスケールを使っているかを確認しそれぞれの方法で観察・評価を行っていただければと思います。おそらく下に示すようなRASSかRamsayを使っていると思います。ちなみに当院はRASSを使っています。









人工呼吸器の設定と実測値確認

人工呼吸器はどのように呼吸をさせるかを決める設定項目があります。この人工呼吸器設定に関しては原則的に医師が行い指示簿などに記載をしているのでその指示通りに人工呼吸器が動いているのか設定指示簿と実際に動いている人工呼吸器を照会しなければいけません。

また、人工呼吸器が動作しているときの実測値(設定に対して患者さんの換気がどうなっているか)を確認し状態把握することも大事なことです。このフォーマットは病院ぞれぞれで工夫していると思いますが、施設にあった確認の仕方を探していくといいと思います。






人工呼吸器アラームの対応

人工呼吸器のアラームと聞くと耳を塞ぎたくなるかもしれませんが人工呼吸器のアラームというのは患者さんの異常な呼吸状態をお知らせしてくれているだけなので冷静に対応しましょう。アラームの対応方法がわからない場合は遠慮なく周りの先輩や同僚に聞くべしです!こちらも別記事があります。
VCVとPCVの違いと使い分け


褥瘡や不顕性誤嚥の予防に努める

人工呼吸器装着中の患者さんは長期臥床を余儀なくされます。このため褥瘡ができやすくこまめな体位変更や除圧が必要です。又、ほとんどの場合が経口的に挿管チューブを挿入している状態なので唾液などを誤嚥する危険性があります。患者の知らない間にいつのまにか誤嚥してしまうことを不顕性誤嚥(サイレントアスピレーション)といいますが、これを予防するためにはギャッジアップを行う必要があります。これらの合併症予防にも看護師は積極的に取り組んでいただきたいです。



患者さんの思いを理解する

僕も駆け出しのときに色々な勉強会やセミナー、学会に行ったりネットで検索したりしましたがさっきまで書いていたようなことはみんな話すんですが、コレ!全く聞かなかったんです。僕は仕事を今までやって来て人工呼吸器に関わってますが、これこそが看護師だからこそできることだと思います。


「思い傾聴する」



人工呼吸器装着中の患者さんは気管内挿管を行っているため声を出すことが出来ません。このため自分の思いを伝えられずいらついたり焦燥感に駆られることもしばしばあります。


患者さんの思いをわかってあげられるのは看護師さんが一番聞き手として上手だと僕は日々感じています。


当院では文字盤を使い指を指してもらったり筆談でコミュニケーションを行っています。上手な人はそのようなツールを使わずにある程度の意志疎通を行っているのでそれには頭が上がりません。患者さんの思いを理解する看護を行っていただければと思います。


長々と各論のつもりで紹介してきましたが、結果的に各論の各論は別記事に飛んでもらわないと収集つかなくなりましたm(__)m


人工呼吸器装着患者さんは複雑に思えますが一つ一つ習得して頑張りましょう!