人工呼吸器を使用したことにより消費した酸素量の求め方について紹介します。これ、以前Yahoo知恵袋で回答したりしてたんですが…医事課の方の需要が強いようです。皆さんせっかくなので知っておきましょう!


ちなみに以前の病院は理解不能な計算で申請を出しておりちゃんとした計算方法で試算したら年間約100万円の赤字申請(とりこぼれ)でした………それでは、いってみましょう!




通常酸素の使用料申請は何Lまでなのか?

通常の酸素吸入(カニューラやマスクによる酸素療法)においては1日あたり14.400Lまでが保険内で申請が通りそれ以上は病院負担となります。この14.400Lは1分間あたりに直すとどれくらいの量かと言いますと……


14400÷24(時間)÷60(分)=10L(分)


となります。 これ以上の申請はレセプトを提出してから査定をうけて14.400Lに減らされてしまいます。→どんな人が14.400L以上になるかというと……リザーバーマスクで15L一日中流してる人とかです……これだと一日あたりの酸素使用量は……


15L/分×60(分)×24(時間)=21.600L/日

となりますが、14.400L/日以上は査定をうけてしまうので……

21.600L/日-14.400L/日=7.200L/日

この7.200Lが病院側の赤字分となります。こんな酸素の申請がまだまだ色んな施設であるようです。


人工呼吸器の酸素使用量の計算方法

人工呼吸器の酸素使用量は設定酸素濃度と分時換気量で変わってきます。この記事はナースだけでなく医事課の方も見ると思うので少しおさらいすると……患者さんに送る一回のガス量を一回換気量と言います。仮に患者さんが一回換気量500mlを要求していたとしたら人工呼吸器から500mlを一回で患者さんに送れるよう設定します。その際にどのくらいの酸素濃度のガスを送るかも人工呼吸器で設定するので下の図のようになります。





そして一回換気量だけでは私達の生命維持は出来ないのでその呼吸を1分間の間に何回か行わなくてはなりません。成人における一般的な呼吸回数は15回程度ですが、その回数は人により様々です。このため人工呼吸器が1分間に送るガスの量は500ml×呼吸回数と表すことができます。この1分間の換気に要するガス量を分時換気量(ふんじかんきりょう)と言います。






ここまで、患者さん側へ送る1分間のガス量が分時換気量となることを紹介してきましたが、実は人工呼吸器の基本動作を行うために患者の換気とは関係ないガス流量が存在します。





この患者さんに送るガス量と呼吸器を作動させるためのガス量を合わせたものが1分間あたりに使うガスの総量となります。そして、このガス総量は酸素と空気を混ぜた混合気体であることを前提に計算をしていこうと思います。



Fio2=酸素濃度を理解しよう!

先に挙げたように人工呼吸器のガスは酸素と空気の混合気体であることが前提にあります。人工呼吸器では、患者さんの状態により酸素濃度を調節しますが、この酸素濃度を表現するときに使うのがFio2という言葉です。このFio2は日本語で吸入気酸素濃度を表し関係性としては……


酸素濃度50%=Fio2 0.5
酸素濃度100%=Fio2 1.0


という表示になります。ようするにFio2の数値は、酸素濃度の数値を1/100した数値と同じ値となります。


ここでは、例として酸素濃度50%の時の考え方を示します。


人工呼吸中の酸素使用量計算式


空気中の酸素濃度はもともと21%あります。ですので酸素濃度21%の空気と酸素濃度100%の酸素をいくらかあわせて50%にするわけです。考え方は理科の授業でやった食塩水の濃度問題と同じです。さて、ここからはこの理科の授業を思い出しつつ例題を考えながら進みましょう!


人工呼吸中の酸素使用量計算方法


酸素濃度100%の時のガスを考えるともともとの空気に21%の酸素があるので酸素配管からの純酸素は100%-21%の79%分を補えばいいことになります。そして酸素の割合を考える時は設定酸素濃度から空気の酸素濃度を引いた0.79という数字をもとに考えます。これは前述したように純酸素は空気の酸素濃度21%から設定酸素濃度に上昇させるためにどれだけかさまししたかなのでこのような考え方になります。






では、酸素濃度50%の場合を考えてみましょう。先程のようにかさましする純酸素の割合は50%-21%=29%となります。この29%は純酸素79%に対してとれくらいの割合かを計算すると0.29/0.79=0.36となります。この0.36という数字を全ガス量に掛けた値が酸素使用量となるわけです。



具体的に計算してみよう!




人工呼吸器の酸素使用量は、設定酸素濃度における患者由来のガス消費量である分時換気量と呼吸器を動かすためのガス量の総和に対し使用時間を掛けたものになります。それでは数値をいれて計算してみましょう!





上に示す通りFio2 0.7、分時換気量6L、呼吸器作動のための流量2Lが1分間あたりに使用するガス総量で使用時間は終日とします。


この時の計算は上のように行い酸素使用量は7.142Lと算出できました。


ここで医事課の方にお願いですが、呼吸器を作動させるためのガス量は機種によって変わってきます。このためご施設の臨床工学技士にきいてみるなりしてもらえたらいいと思います。


また、ナースに処置伝で設定酸素濃度や分時換気量を聞いてもらうと思いますが、酸素濃度は設定酸素濃度、分時換気量は実測の分時換気量の平均値(経過記録などに記載する値)を控えたら大丈夫です!


サーボという呼吸器でいえば下のような項目となります→酸素濃度は実測値を示しちゃってますが……





我々もコスト管理などに対してしっかり考えていきましょう!