HFOの原理と臨床設定について
今回は新生児領域で多用されるHFOについて原理と臨床的使い方を紹介します。需要は少ないかもしれませんが、新生児領域に関与しない方も軽く呼吸療法認定士の試験なんかに出るかもしれないのでご覧ください。
HFO(エイチエフオー)とは?
High Frequency Occilation 高頻度振動換気というものです。読んで字のまま、高頻度で換気を行うわけですが…新生児で呼吸数が50回以上あることは当たり前のようにあります。そして、この呼吸回数は生理的呼吸レベル内。
HFOは高頻度という程なので生理的でない頻度で換気を行います。では、どのくらいの頻度で換気を行うかというと10~15Hz(ヘルツ)あたりが多いのではないかと思います。
Hz(ヘルツ)って何?
ドイツ語で心臓のことをヘルツとい言いますが…ここでいうヘルツはFrequencyという英語である振動数の単位を表しています。ではこのヘルツについてもっと詳しく見ていきます。1ヘルツでは1秒間に上向きの山と下向きの山が1つづつあります。この上向きの山と下向きの山ですが、上向きの山が吸気で下向きの山が呼気を表すことから2つで1セット…つまり1呼吸ということになります。また、このセットのことを1周期と呼びます。そしてこの吸気と呼気の比率は1:1なのでI:Eも1:1ということになります。
次にヘルツと2ヘルツ、4ヘルツの図を示します。
先程の1ヘルツが1秒間に上の山と下の山が1セット…つまり1周期だったので2ヘルツでは2周期。4ヘルツでは4周期となります。ようするに振動数は1秒間に何周期分あるかを表すものということになります。以上の考え方からHFOの振動数としてよく使われる15ヘルツで見てみると…
1分間の振動数は900回ということになります。
たくさん振動させるのは分かったけど…それの何がいいのか?
肺障害の原因となるのは肺を膨らませる時のストレスです。
図のように肺を膨らませるための圧力変化が大きければ大きいほど肺障害の懸念がでてくるので小さい換気量を高頻度で行い圧力変化を小さくしたHFOは肺低形成などの新生児においてメリットのある換気法となるわけです。
設定項目のAmplitude(アンプリチュード)とは?
新生児HFOにおける人工呼吸器設定はMAP(平均気道内圧)とFiO2、Hz(振動数)とAmplitudeで決定します。MAPとFiO2に関しては酸素化のパラメーター、HzとAmplitudeに関しては換気のパラメーターとなります。ようするにPO2を上げたかったらMAPかFiO2を変更してPCO2を下げたかったらHzかAmplitudeを変更します。ここでHFO独特の換気パラメーターAmplitudeに関してですが、Amplitudeとは、図のように換気を生み出すための振動波における振幅をさします。このAmplitudeは、波の最大値と最小値の幅のことをいうのでAmplitudeの高さ半分のラインがベースラインとなります。このベースラインをもとに波を作っているので人工呼吸器の動作としてはベースラインをMAPとしてそのMAPラインから圧力をかけたり抜いたりすることで振動を作っています。なお、AmplitudeはMAPに関係する因子なので単位としてはMAPと同じcmH2Oであることが分かると思います。また、Amplitudeを大きくすれば一回換気量は増大しますし下げれば減少するということになります。
HFO施行時の注意点
このAmplitudeに関しての注意点ですが、人工呼吸器でAmplitudeを30cmH2Oに設定したとしても振動の波は人工呼吸器回路や気道成分により減衰し肺胞到達時点での波は実際小さくなっています。このことからHFO患者の人工呼吸器回路内の結露や気道抵抗上昇患者においてはうまく振動が伝わらなくなる可能性があるので注意が必要となります。また、実際に不馴れなドクターが間違えそうになったので紹介しておきますが…HFOの換気は振動数とAmplitudeにより規定されますが、振動数を減らすと1つの波の幅が大きくなる(吸気時間が長くなる)ので過大な一回換気量を送る危険性があります。これもまた注意が必要なので気を付けてもらえたらと思います。
今回は新生児領域で用いられるHFOに関する紹介でした。新生児に関わる方は少ないかもしれませんが、新生児は小さな大人ではないということを念頭に患者ケアを行って頂きたいと思います。また、成人領域においても肺障害の注意などは共通認識かと思いますので換気時の圧力変化についても今一度考えてもらえたら幸いに思います。
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