今回は人工呼吸器で必須設定項目であるPEEPについて深く紹介したいと思います。



PEEP(ピープ)とは?

Positive End Expiratory Pressureという英語で日本語で呼気終末陽圧と略します。英語の意味としてはそれぞれ…


Positive(ポジティブ)       陽
End(エンド)          終末
Expiratory(エクスピラトリー)   呼気
Pressure(プレッシャー)      圧


と訳します。このPEEPですが、何のために設定するかといいますと…


機能的残気量の増加による肺虚脱防止です。


よく生体肺をゴム風船に例えると思います。ゴム風船は図の左側のように空気をいれ始める時は膨らませるのに力を要します。しかし、図の右側のように少し膨らんでいる状態からさらに膨らませる分にはそう大きな力を必要としません。




このことから肺の中にガスをとどめておくと膨らみやすく虚脱しないというわけです!私達は自然呼吸において意識せずとも若干のPEEP作用(正確にいえば自然呼吸での胸腔内圧は常に陰圧なので違うのですが…)を働かせる事ができますが、挿管しているとこの作用を維持できません。


そのためにもPEEPは必要なのです。そして出てきた不思議な単語…「機能的残気量」…


先に紹介しているようにガスをとどめているわけですが、これは肺気量分画でいう「残気量」を有している事になります。そして残気量は残気量でも機能的残気量というものに当たるのですがこの機能的残気量とは…


機能的残気量=残気量+予備呼気量


と表せます。


この機能的残気量を多くすると肺を膨らませガスを留めさせます。ガスを溜め込み肺が潰れないようにしているのでガス交換能も高くなる=酸素化を改善する働きがあるということになります。


もっと噛み砕くと、膨らんでない肺がガス交換できるわけないのは当たり前。それに比べて膨らんでいる肺があれば膨らんでいる肺の方がガス交換能力が高いにきまってるじゃないか!極論これだけなのです。。。


少し難しく言うと肺水腫やARDSでは肺胞を水の層が覆っています。そんな時に図のようにPEEPをかけると肺胞と毛細血管までの距離が短くなるので酸素の拡散が行いやすいという話もあります。



そんなPEEPですが、実際いいことばかりではなく副作用的な弊害が生じてしまいます。なんでもメリットにデメリットはつきものです。。。

そしてこれを知っておかなければ大変!この副作用に関しては「呼吸」と「循環」に分けて別記事で紹介したいと思います。


PEEPの副作用(循環編)
PEEPの副作用(呼吸編)