久々の更新・・・今回はとある当直の日勤帯で看護師から相談された内容から挿管チューブの管理についてご紹介。

相談内容は「人工呼吸器のことではないけど・・・」とベッドサイドへ連れて行かれると「ぐ~」「ぐ~」と患者口腔内から音が聞こえるではありませんか。こんなとき何を疑いどう対処するかみていきます。


挿管患者の口腔内から音が聞こえたら何を疑うか?

①カフが抜けていないか?

挿管チューブは小児患者や、特別な理由のない場合カフがついているはずです。挿管チューブのカフは人工呼吸器からの送気ガスや患者からの呼気ガスをシーリングして適切な換気を行うためであったりサイレントアスピレーション(不顕性誤嚥)予防のための物ですが、このカフが膨らんでいない場合は空気が漏れて音がします。

まず、最初に疑うのはコレですね。下に正常にカフが膨らんでいる状態のチューブとカフが抜けてしまった状態とを紹介しています。カフが抜けていたらカフ圧計を使って適切にカフを入れて管理しましょう!




②カフを何度いれても音がする

今回の事例で部屋もちナース曰く「カフ圧も結構はいっているんですけど・・・こんな感じで・・・」って事ですが、人工呼吸器のグラフィックを見てみるとこんな感じ


明らかにリーク波形が出現しており吸気一回換気量と呼気一回換気量にも差が・・・。
体交でもしたのかな?と聞いてみるとそういうわけではなく・・・音がするからカフ圧測定やアンカーファストの位置をかえたりもしてみたらしい。

③カフが破れていないか?

カフを入れてもリークが続く場合、そもそものカフが破れていたらいくらカフを膨らまそうとしたところで膨らまずに漏れてしまいます。とりあえずカフを入れてカフの様子を観察しもしカフがすぐ抜けるようであればチューブ入れ換えが必要です。

④カフを膨らますラインが閉塞していないか?

これ・・・意外とあって挿管チューブを固定するときにカフラインを曲げ潰してしまったり患者がカフラインを噛んでいたりするとカフを入れても入れてもはいっていかない・・・という。カフラインは口腔内まで確認しないといけない場合があるので要注意です。

⑤挿管チューブが抜けかかっていないか?

今回の事例における原因はコレでした。そもそも挿管チューブの位置は挿管時に胸写で確認しますが、固定の状態や患者体動など様々な要因で抜けてしまうことがあります。先ずは正常な挿管チューブの位置をおさらいしますが・・・・


ざっくりいうと主気管支の数センチ上にチューブ先端がくるように固定します。

数センチといっても体格などでその尺度は変わるので具体的数値は紹介していません。てなわけで、挿管チューブの深さがNGな場合は下に出すようにこんな感じ・・・


左側は深く入れすぎて右の気管支にチューブが入り込んでいます。これでは右側の肺しか換気ができないので片肺挿管・・・この状態で通常換気を行うと右肺だけに両肺分の換気を送気してしまうので右肺は過剰換気になってしまいます。ようするに過剰容量による肺過伸展となり過伸展肺障害・・・Volutraumaの危険が出てきてしまいます。

一方、今回の事例のように挿管チューブが浅すぎると事故抜管のリスクが上がり再挿管や不慮の食道挿管にもなりかねないので先ずは胸写を撮って前回の固定位置からずれているかどうかを確認しましょう!実際、通常は口角固定などを行い固定位置の長さを確認していると思いますが、頭部の後屈や伸展で長さは変わって見えるので注意が必要です。

いかがだったでしょうか?挿管チューブのアセスメントは看護師のみならず呼吸療法に関係する全ての職種が行うべきだと思います。

臨床工学技士は胸写やCTなどあまり見ない人が多いように感じていますが、画像から分かる情報も沢山あるのでフィジカルやグラフィックに加えて画像読影もすすんでやってもらえたらと思います!