一番日本で出回っているMR850という加温加湿器にはマニュアル設定ということでオートモード以外の設定ができるようになっています。今回はそんなMR850のマニュアル設定方法と臨床的意義について触れていきます。


マニュアルモードへの切り替え方法



マニュアル(Humidity Conpensation、湿度補正)モードへの切り替えは特殊な方法で行います。この切り替え方法と各設定内容を紹介します。
MR850マニュアル設定方法1
MR850マニュアル設定方法2
MR850マニュアル設定方法3


このように加温加湿器を操作しマニュアルモードへ変更するわけですが、このマニュアルモードを使用したらどうなるのか…


その前に各温度での絶対湿度(温度に対する1L中の水蒸気量)を紹介します。


温度よ絶対湿度の関係


以前の記事でも紹介しましたが、肺内は37℃絶対湿度44mg/Lで相対湿度100%になっていると言われています。


このため加温加湿器で乾燥したガスを加湿する場合は水蒸気化する場所(加温加湿器でいったらチャンバー部分)を37℃以上で供給しなければなりません。また、挿管チューブでは約3℃の温度低下があるといわれているので挿管チューブ接続部分である口元温度を40℃設定にしていることが多いわけです。



そうすると肺内へ37℃絶対湿度44mg/L、相対湿度100%のガスを送れます。ではマニュアルモードではどうでしょう。



マニュアルモードにおける絶対湿度と相対湿度

ここではマニュアルモード1.0と3.0の場合で見ていきます。


・マニュアルモード1.0




温度設定は上の図のようになります。このときの絶対湿度の関係は…





38℃の時に1L中にある水蒸気量は46mg/Lなので44mg/Lの水蒸気量はクリアします。そこから40℃に温度をあげたときに相対湿度は一旦低下してしまいますが挿管チューブによる温度低下があるので2℃以上の温度低下があれば100%の湿度となります。





・マニュアルモード3.0





マニュアルモード1.0の時の考え方を引用しますが、温度設定は上の図のようになります。このときの絶対湿度の関係は…




40℃の時に1L中にある水蒸気量は50mg/L。そこから39℃に温度が下がった時に相対湿度は100%の湿度となります。2mg/Lは冷えているので吸気回路中の結露となります。






マニュアルモードは臨床的に意義があるのか

実際、このマニュアルモードを使って臨床的に何か意義があるかというと個人的には意味をなさないと思っています。もちろん、一般論でいう「湿度が高い方が温度がさがりにくい」という説をもってマニュアルモードに変更したりするのは自由であるとは思います。



当院でも一部で吸気側回路に結露が多いとの理由でマニュアルモードを使っているときいたことがありますし…


しかし、基本的に結露を押さえるためにはそもそものチャンバー温度を下げて結露となる絶対湿度差(含有水蒸気量)を下げるか外気温による影響を抑えるかだと思います。


喀痰が固いなどの弊害がない場合は加温加湿器から人工鼻に変更する方がよっぽどいいと私は思います。


また、口元温度を下げるという選択も気道や生体組織側からの水分を奪い痰が硬くなるなどの不利益があるのでなんでも人工鼻とも言えません。



加温加湿器の管理は気道管理が主です。つまり痰性状などを観察し適切な管理を行うことが大事なのではないかと思います。回路結露があり結露が生体に入り込まないようまずは観察と注意から行ってほしいと思います。